日本国内でのハッキング事件が相次いだ2018年。
ハッキングのリスクを減らせるということで、分散型取引所が注目を集めました。
本記事では、
- 分散型取引所ってなに?
- 分散型取引所って有望なの?
こんな疑問に答えていきます。
分散型取引所(DEX)とは
そもそも分散型とは
仮想通貨を触っているとよく出てくる概念である「分散型」。
分散型を簡単に説明すると、「管理者がおらず」「分散して」「自律的に動作する」システムのことを指します。
概念を簡単に理解するために、「管理者がいて」「中央集権的に」「管理者により動作する」システムである中央集権型と対比されます。
分散型取引所(DEX)とは
分散型という仕組みを取り入れた取引所を、中央集権的な取引所と対比して、分散型取引所(DEX = Decentralized Exchange)と呼びます。
分散型取引所を理解するために、まずはなじみのある中央集権型取引所の例を見ていきます。
中央集権型の取引所ひとつに、国内取引所のザイフ(Zaif)があります。
こちらの取引所では、管理者もいるし、送金や出金の際にはZaifの方で確認作業が必要でして、必ず人による管理が行われていました。
ウォレットの秘密鍵は管理者が保管しているという特徴もあります。
その一方で、たとえばEtherDeltaと呼ばれる分散型取引所には管理者が存在しません。
自律的なシステム上に自分たちで管理している秘密鍵を持ち寄り、個人間での取引を行うというのが特徴です。
このような表現をすると難しく感じてしまうかもしれませんが、分散型取引所は既にいくつも存在しているので使ったことがある人もいるかもしれません。
現存する分散型取引所一覧
現存する分散型取引所の例をいくつか紹介いたします。
・CryptoBridge
国産コインであるモナコインや、日本でも話題になったXPの取り扱いのある分散型取引所です。
興味深いコインが多く、他の取引所にないような通貨ペアがあるのが特徴的です。
・EtherDelta
イーサリアム関連のトークンの取り扱いが豊富です。
イーサリアムではトークンを個人でも簡単に作れます。
そしてそのトークンは簡単にEtherDelta上で取引できるようになるので、これから流行るのではないかと思っています。
・Counterparty DEX
ビットコインのブロックチェーン上に存在する分散型取引所です。
こちらではXCPという独自トークンを用いて取引を行うことが可能です。
・Waves platform DEX
Wavesのブロックチェーン上に存在する分散型取引所です。
このように、分散型取引所にも様々な種類があるということをご理解いただけたと思います。
ここで、
「日本には分散型取引所って存在しないの?」
という質問が聞こえてきそうなのでお答えすると、以前まで、日本国内にも分散型取引所が複数存在していました。
「ミスターエクスチェンジ」「東京ゲートウェイ」という取引所です。
しかし現在では、仮想通貨交換業の登録がはく奪されてしまったため、日本での運営は取りやめる方針となっています。
分散型取引所(DEX)の最新情報
分散型取引所(DEX)の欠点を根本的に解決!?
分散型取引所の代表的な欠点として、「出来高と板の薄さ」があります。
これはつまり、取引しようとしても成立しない、あるいは取引成立までの時間がかかってしまうことを意味しています。
最近では、この分散型取引所の欠点を補うような仕組みが開発しようという動きが活発化されてきているとコインポストで報じられました。
このプロジェクトが実現することで、より仮想通貨取引が柔軟に行われるようになっていくでしょう。
このサービスは2018年末にβ版公開を予定しています。
参考:コインポスト
BinanceのDEX、β版がリリース間近
Binanceは2017年の設立当初から、分散型取引所DEXについてホワイトペーパー内にて言及していました。
ついにその目標であるBinanceの分散型取引所のリリースが近づいているようです。
Binanceで使える独自通貨であるBNBをネットワーク使用料であるGAS代として使用することや、個人が簡単にトークンを作成できる機能を兼ね備えることなどを計画しています。
世界最大手のBinanceが分散型取引所の開発に取り組んでいることからも、これから分散型取引所の波が押し寄せてくる気配を感じます。
Binance CEOによると、2018年の暮れから2019年初頭にかけて、パブリックβ版のリリースを予定しています。
参考:CoinChoice
ビッサムやビットフィネックスでもDEX立ち上げ予定
Binanceの他にも、世界の大手取引所であるビッサムやビットフィネックスが分散型取引所の開発に励んでいます。
参考:コインテレグラフ(ビッサム関連)
参考:コインテレグラフ(ビットフィネックス関連)
Vitalik、中央集権型の取引所に辛口コメント
イーサリアムの開発者であるVitalikは、現存の中央集権的な仮想通貨取引所に対して苦言を呈しています。
ブロックチェーン技術の核心は、その公開性と透明性です。
しかし、仮想通貨取引所への新通貨上場には高額な手数料を収めなければいけないということで、その公開性と透明性を失ってしまっていると述べています。
イーサリアムの時価総額は2位と非常に大きいです。その開発者であるVitalikのコメントが意味することは大きく、今後も分散型取引所は注目を集めていくことでしょう。
参考:コインテレグラフ
分散型取引所のメリット
分散型取引所を理解するためにはそのメリットとデメリットを知ることが有効だと思いますので、まずは分散型取引所のメリットについて紹介していきます。
- 運営内部の不正リスクを回避できる
- 面倒な手続きを回避できる
- 24時間365日使える
- ハッキングされにくい
- 手数料が低い
これらのメリットについて詳細に見ていきます。
運営内部の不正リスクを回避できる
コインチェックやザイフでのハッキング事件が起こった時、
「内部犯行ではないのか?」
といった意見を度々目にしました。
これは中央集権的な取引所だからこそ、疑われてしまったと言えます。
分散型取引所では管理者がいないため、そのような不正は実行不可能です。
そのため、我々ユーザーも運営側の不正リスクを気にすることなく、取引所を扱うことができます。
面倒な手続きを回避できる
中央集権的な取引所と異なり、分散型取引所では本人確認が不要なケースがほとんどです。
2017年末の仮想通貨が一番盛り上がっていた時期は、ザイフで本人確認に1か月以上かかるという遅延問題が発生していました。
分散型取引所ではそのような遅延が起こりえないというのはひとつのメリットと言えそうです。
24時間365日使える
分散型取引所はその自律性から、24時間365日使うことができます。
その一方で中央集権的な取引所は、何か問題が発生した際には入出金や取引ができなくなってしまうということが発生してしまいます。
ハッキングされにくい
中央集権的な取引所に仮想通貨を保管するということは、自分の持っている通貨の管理を取引所に委託していることになります。
この取引所が管理しているウォレットがハッキングを受けてしまうと、全ユーザーの通貨が根こそぎ奪われてしまうので、中央集権的な取引所はハッキングリスクが高いです。
その一方で分散型取引所では、それぞれのユーザーが秘密鍵を管理した状態で、個人間で取引を成立させます。
なので分散型取引所では、全ユーザーが仮想通貨を共通のウォレットに保管するわけではないので、ハッキングリスクを抑えることができます。
手数料が低い
分散型取引所では自律的にシステムが動くので、人件費が発生しません。
なので、中央集権的な取引所と異なり、手数料が比較的抑えられていく予定です。
残念ながら現在の分散型取引所は開発途上ということもあり、手数料もそこそこ取られてしまいます。
ですが、そのシステムが完成した暁には、手数料がほとんどかからない取引所が完成します。
分散型取引所のデメリット
注目を集めている分散型取引所(DEX)ですが、もちろん欠点やデメリットは存在します。
- 取引量が少なく、流動性が低い
- 税金や仮想通貨交換業問題
- マネーロンダリング問題
- 利用に関しては自己責任、サポートは手薄
これらの点について詳しく見ていきます。
取引量が少なく、流動性が低い
分散型取引所の知名度は上がってきてはいますが、実際に分散型取引所で取引をする人は少ないです。
そのため取引量が少なく、流動性が低いといった問題点があります。
流動性が低いので、希望価格での取引が成立しないことも多々起こります。
この点に関しては、大手取引所のBinanceなどが分散型取引所に参入することで、取引量が増え流動性は改善されていくと考えています。
税金や仮想通貨交換業問題
まだ仮想通貨に関する法律や方針ができてから日が浅いので、税金や仮想通貨交換業にまつわる規制がきちんと整っていません。
現在日本国内に分散型取引所が存在しないことを考えると、我々日本人が分散型取引所を利用すること自体グレーな可能性もあります。
分散型取引所自体が改善されていくとともに、法律や規制の面が整うことが必要です。
マネーロンダリング問題
分散型取引所を使うメリットのひとつに、「本人確認が不要でめんどうな手続きがいらない」ということを紹介しました。
これは匿名で仮想通貨のやりとりできる場を提供してしまうので、マネーロンダリングの温床になってしまう可能性があります。
我々ユーザーが使っている限りは特に迷惑をこうむることはありませんが、犯罪者の抜け道となりうるということは問題ですね。
利用に関しては自己責任、サポートは手薄
中央集権型の取引所だと、なにか事件や不祥事、不手際があった際は、取引所側が責任を取ってくれることが多いです。
コインチェック社やザイフのハッキングといった不祥事の際には、どちらの会社も全額返金対応をしています。
その一方で分散型取引所だと、このような対応が行われる可能性は限りなく0に近いです。
なぜなら分散型取引所には管理者がいないから。責任を取れる人もいないということですね。
なので、分散型取引所の利用に関してはすべて自己責任と考えて利用しなければなりません。
現状だと分散型取引所は素人が使うには少し難しい点もあるので、これからみんなが使えるように普及していくのはまだ時間がかかるだろうなと思います。
分散型取引所の今後と将来性は?
最後に分散型取引所の今後と将来性について考察していきます。
分散型取引所(DEX)の将来性と今後を予想
2018年10月現在では、使い勝手の良さから中央集権的な取引所がメインとして使われています。
しかし、分散型取引所が目指しているビジョンが全て実現すれば、分散型取引所が中央集権型取引所を駆逐してしまう日も訪れるのではないかと思っています。
このように考えているのは、大手取引所であるBinance、ビッサムなども中央集権型取引所の今後に危惧を抱いているからこそ、独自の分散型取引所を開発することに躍起になっていると考察しているからです。
これまでにリリースされてきた分散型取引所のサービスは、お世辞にも使いやすいと言えるものは無かったです。
ユーザー目線に沿えるBinanceやビッサムなどが分散型取引所という市場に参入することで、クオリティの高い分散型取引所が生まれ、より仮想通貨の取引が「安心・安全・簡単」に行われるようになることを願っています。